アーティスト:キリンジ
作詞・作曲:堀込高樹
このシリーズでは名曲の中で音楽理論がどのように使われているかを学ぶことができます。
今回は、キリンジの名曲「悪玉」のコード分析を行います。
「悪玉」では、以下の音楽理論の使い方を学ぶことができます。
- テンションコード
- セカンダリードミナントコード
- ナインスコード
- モーダルインターチェンジコード
- ディミニッシュコード
- 偽終止
- オンコード
- マイナーセブンスフラットファイブ
- 裏コード
それでは分析していきましょう。
ここではダイアトニックコードを理解していることが前提です。ダイアトニックコードを知らない方は以下で勉強しましょう。
ダイアトニックコードとは?コード進行の作り方
イントロ
キーはCメジャーです。
|C|E7(#9)|Am7|F7(9)
→|Ⅰ|Ⅲ7(#9)|Ⅵm7|Ⅳ7(9)
コード | 説明 |
---|---|
Ⅲ7(#9) | テンションコードです。 テンションコードについてはコチラをご覧下さい。
Ⅵm7に対するセカンダリードミナントコードです。 セカンダリードミナントコードについてはコチラ↓ |
Ⅳ7(9) | テンションコードの1つであるセブンスナインスコードです。 テンションコードについてはコチラをご覧下さい。 セブンスナインスコードの使い方についてはコチラをご覧下さい。
Ⅳ7はドリアンモードからのモーダルインターチェンジコード(借用和音)です。 モーダルインターチェンジコードについてはコチラ↓ |
Aメロ・間奏1
キーはCメジャーです。
|C|E7|Am7|F#dim7
→|Ⅰ|Ⅲ7|Ⅵm7|#Ⅳdim7
(足に科せられた~)
|C|A7 A7(♭13)|D7(9)|B♭7
→|Ⅰ|Ⅵ7 Ⅵ7(♭13)|Ⅱ7(9)|♭Ⅶ7
(異教徒のごとく~)
<Aメロ2回目はここから>
|C|E7|Am7|F#dim7
→|Ⅰ|Ⅲ7|Ⅵm7|#Ⅳdim7
(勝つことを許されない~)
|C|A7 A7(♭13)|D7(9)|B♭M7 C7onB♭
→|Ⅰ|Ⅵ7 Ⅵ7(♭13)|Ⅱ7(9)|♭ⅦM7 Ⅰ7on♭Ⅶ
(反則負けこそが~)
コード | 説明 |
---|---|
Ⅲ7 | Ⅵm7に対するセカンダリードミナントコードです。 セカンダリードミナントコードについてはコチラ↓ |
#Ⅳdim7 | Ⅳ7の代理コードとしてのディミニッシュコードです。
Ⅳ7はドリアンモードからのモーダルインターチェンジコード(借用和音)です。 モーダルインターチェンジコードについてはコチラ↓ |
Ⅵ7 | Ⅱm7に対するセカンダリードミナントコードです。 セカンダリードミナントコードについてはコチラ↓ |
Ⅵ7(♭13) | テンションコードです。 テンションコードについてはコチラをご覧下さい。
Ⅵ7はⅡm7に対するセカンダリードミナントコードです。 セカンダリードミナントコードについてはコチラ↓
ただし実際はⅡm7に進行せず、Ⅱ7(9)に偽終止しています。 |
Ⅱ7(9) | テンションコードの1つであるセブンスナインスコードです。 テンションコードについてはコチラをご覧下さい。 セブンスナインスコードの使い方についてはコチラをご覧下さい。
Ⅱ7はⅤ7に対するセカンダリードミナントコードです。 セカンダリードミナントコードについてはコチラ↓
ただし実際はⅤ7に進行せず、Ⅶ♭7、Ⅶ♭M7に偽終止しています。 |
♭Ⅶ7 | エオリアンモードからのモーダルインターチェンジコード(借用和音)です。 モーダルインターチェンジコードについてはコチラ↓ |
♭ⅦM7 | ミクソリディアンモードからのモーダルインターチェンジコード(借用和音)です。 モーダルインターチェンジコードについてはコチラ↓ |
Ⅰ7on♭Ⅶ | Ⅰ7の7度の音を最低音にしたオンコードです。 オンコードについてはコチラ↓ 度の意味についてはコチラ↓
Ⅰ7はミクソリディアンモードからのモーダルインターチェンジコード(借用和音)です。 モーダルインターチェンジコードについてはコチラ↓ |
Bメロ
キーはCメジャーです。
|Dm7 Dm7onG|CM7 Am7
→|Ⅱm7 Ⅱm7onⅤ|ⅠM7 Ⅵm7
(打ちのめされた~)
|Bm7 Em7|CM7 F7
→|Ⅶm7 Ⅲm7|ⅠM7 Ⅳ7
(この背中を~)
|D7(9) G7|F#m7-5 B7
→|Ⅱ7(9) Ⅴ7|#Ⅳm7-5 Ⅶ7
(息子のお前も~)
|Em7(9)|A7(#11) A7
→|Ⅲm7(9)|Ⅵ7(#11) Ⅵ7
(さげすむのかい~)
|C7|Bm7onE E7
→|Ⅰ7|Ⅶm7onⅢ Ⅲ7
(今宵こそ~)
コード | 説明 |
---|---|
Ⅱm7onⅤ | Ⅱm7の11thの音を最低音にしたオンコードです。 オンコードについてはコチラ↓ |
Ⅶm7 | リディアンモードからのモーダルインターチェンジコード(借用和音)です。 モーダルインターチェンジコードについてはコチラ↓ |
Ⅳ7 | ドリアンモードからのモーダルインターチェンジコード(借用和音)です。 モーダルインターチェンジコードについてはコチラ↓ |
Ⅱ7(9) | テンションコードの1つであるセブンスナインスコードです。 テンションコードについてはコチラをご覧下さい。 セブンスナインスコードの使い方についてはコチラをご覧下さい。
Ⅱ7はⅤ7に対するセカンダリードミナントコードです。 セカンダリードミナントコードについてはコチラ↓ |
#Ⅳm7-5 | リディアンモードからのモーダルインターチェンジコード(借用和音)です。 モーダルインターチェンジコードについてはコチラ↓
|
Ⅶ7 | Ⅲm7に対するセカンダリードミナントコードです。 セカンダリードミナントコードについてはコチラ↓ |
Ⅲm7(9) | テンションコードの1つであるマイナーナインスコードです。 テンションコードについてはコチラをご覧下さい。 マイナーナインスコードの使い方についてはコチラをご覧下さい。 |
Ⅵ7(#11) | テンションコードです。 テンションコードについてはコチラをご覧下さい。
Ⅵ7はⅡm7に対するセカンダリードミナントコードです。 セカンダリードミナントコードについてはコチラ↓ |
Ⅵ7 | Ⅱm7に対するセカンダリードミナントコードです。 セカンダリードミナントコードについてはコチラ↓
ただし実際はⅡm7に進行せず、Ⅰ7に偽終止しています。 |
Ⅰ7 | ミクソリディアンモードからのモーダルインターチェンジコード(借用和音)です。 モーダルインターチェンジコードについてはコチラ↓ |
Ⅶm7onⅢ | Ⅶm7の11thの音を最低音にしたオンコードです。 オンコードについてはコチラ↓
Ⅶm7はリディアンモードからのモーダルインターチェンジコード(借用和音)です。 モーダルインターチェンジコードについてはコチラ↓ |
Ⅲ7 | Ⅵm7に対するセカンダリードミナントコードです。 セカンダリードミナントコードについてはコチラ↓ |
サビ
キーはGメジャーです。
|Am7 Am7onD|GM7 CM7
→|Ⅱm7 Ⅱm7onⅤ|ⅠM7 ⅣM7
(高らかに~)
|Am7 Am7onD|Bm7 Em7(11) Em7
→|Ⅱm7 Ⅱm7onⅤ|Ⅲm7 Ⅵm7(11) Ⅵm7
(決めぜりふ~)
|F#m7 B7|GM7
→|Ⅶm7 Ⅲ7|ⅠM7
(破壊の神シヴァよ~)
|CM7 GM7|Am7 Em7
→|ⅣM7 ⅠM7|Ⅱm7 Ⅵm7
(血の雨を~)
|Am7 Am7onD|GM7 CM7
→|Ⅱm7 Ⅱm7onⅤ|ⅠM7 ⅣM7
(熱い汗を~)
|Am7 Am7onD|Bm7 Em7(11) Em7
→|Ⅱm7 Ⅱm7onⅤ|Ⅲm7 Ⅵm7(11) Ⅵm7
(凍える魂~)
|F#m7 B7|Em7(9) C7(9)
→|Ⅶm7 Ⅲ7|Ⅵm7(9) Ⅳ7(9)
(引き際を鮮やかに~)
|C#m7 F#7|F#m7onB B7
→|#Ⅳm7 Ⅶ7|Ⅶm7onⅢ Ⅲ7
(哀しい知恵~)
<1回目、2回目>
|CM7 Bm7|Am7 GM7
→|ⅣM7 Ⅲm7|Ⅱm7 ⅠM7
(吹っ切れた~)
|F7(9)|F7|F#m7 B7
→|♭Ⅶ7(9)|♭Ⅶ7|Ⅶm7 Ⅲ7
(自由~)
<3回目>
|CM7 Bm7|Am7 D7
→|ⅣM7 Ⅲm7|Ⅱm7 Ⅴ7
(興行主(プロモーター)~)
|Em7 GonD|D♭m7-5|Cm7
→|Ⅵm7 ⅠonⅤ|#Ⅳm7-5|Ⅳm7
(罵声うず巻く~)
|Bm7 Em7|Am7 GM7
→|Ⅲm7 Ⅵm7|Ⅱm7 ⅠM7
(お前の無垢なる~)
|F7|F7|F7|F#m7 B7
→|♭Ⅶ7|♭Ⅶ7|♭Ⅶ7|Ⅶm7 Ⅲ7
(見い出すのだ~)
サビの最初でCメジャーキーからGメジャーキー(完全5度上)にドミナントコードを使った転調をしています。
完全5度上の調(属調)は近親調であり転調しやすいです。
また、1回目のサビの最後でGメジャーキーからCメジャーキー(完全4度上)に直接転調をしています。
完全4度上の調(下属調)は近親調であり転調しやすいです。
転調については以下をご覧ください。
「転調の方法」と「転調パターン一覧」
コード | 説明 |
---|---|
Ⅱm7onⅤ | Ⅱm7の11thの音を最低音にしたオンコードです。 オンコードについてはコチラ↓ |
Ⅵm7(11) | テンションコードです。 テンションコードについてはコチラをご覧下さい。 |
Ⅶm7 | リディアンモードからのモーダルインターチェンジコード(借用和音)です。 モーダルインターチェンジコードについてはコチラ↓ |
Ⅲ7 | Ⅵm7に対するセカンダリードミナントコードです。 セカンダリードミナントコードについてはコチラ↓
ただし実際はⅥm7に進行せず、ⅠM7に偽終止しています。 |
Ⅵm7(9) | テンションコードの1つであるマイナーセブンスナインスコードです。 テンションコードについてはコチラをご覧下さい。 マイナーセブンスナインスコードの使い方についてはコチラをご覧下さい。 |
Ⅳ7(9) | テンションコードの1つであるセブンスナインスコードです。 テンションコードについてはコチラをご覧下さい。 セブンスナインスコードの使い方についてはコチラをご覧下さい。
Ⅳ7はドリアンモードからのモーダルインターチェンジコード(借用和音)です。 モーダルインターチェンジコードについてはコチラ↓ |
#Ⅳm7→Ⅶ7 | Ⅲ7に対するツーファイブを挿入しています。 ツーファイブの挿入についてはコチラ↓ |
Ⅶm7onⅢ | Ⅶm7の11thの音を最低音にしたオンコードです。 オンコードについてはコチラ↓
Ⅶm7はリディアンモードからのモーダルインターチェンジコード(借用和音)です。 モーダルインターチェンジコードについてはコチラ↓ |
♭Ⅶ7(9) | テンションコードの1つであるセブンスナインスコードです。 テンションコードについてはコチラをご覧下さい。 セブンスナインスコードの使い方についてはコチラをご覧下さい。
♭Ⅶ7はエオリアンモードからのモーダルインターチェンジコード(借用和音)です。 モーダルインターチェンジコードについてはコチラ↓ |
♭Ⅶ7 | エオリアンモードからのモーダルインターチェンジコード(借用和音)です。 モーダルインターチェンジコードについてはコチラ↓ |
ⅠonⅤ | Ⅰの5度の音を最低音にしたオンコードです。 度の意味についてはコチラ↓ オンコードについてはコチラ↓ |
#Ⅳm7-5 | リディアンモードからのモーダルインターチェンジコード(借用和音)です。 モーダルインターチェンジコードについてはコチラ↓
|
Ⅳm7 | エオリアンモードからのモーダルインターチェンジコード(借用和音)です。 モーダルインターチェンジコードについてはコチラ↓ |
間奏2・アウトロ
キーはGメジャーです。
|Am7|Am7|F7(9)|F7(9)
→|Ⅱm7|Ⅱm7|♭Ⅶ7(9)|♭Ⅶ7(9)
|GM7|GM7|C7(9)|C7(9) Bm7 B♭7(13)
→|ⅠM7|ⅠM7|Ⅳ7(9)|Ⅳ7(9) Ⅲm7 ♭Ⅲ7(13)
|Am7|Am7|F7(9)|F7(9)
→|Ⅱm7|Ⅱm7|♭Ⅶ7(9)|♭Ⅶ7(9)
<間奏2はここまで>
|GM7|GM7|C7(9)|C7(9) Bm7 B♭7(13)
→|ⅠM7|ⅠM7|Ⅳ7(9)|Ⅳ7(9) Ⅲm7 ♭Ⅲ7(13)
コード | 説明 |
---|---|
♭Ⅶ7(9) | テンションコードの1つであるセブンスナインスコードです。 テンションコードについてはコチラをご覧下さい。 セブンスナインスコードの使い方についてはコチラをご覧下さい。
♭Ⅶ7はエオリアンモードからのモーダルインターチェンジコード(借用和音)です。 モーダルインターチェンジコードについてはコチラ↓ |
Ⅳ7(9) | テンションコードの1つであるセブンスナインスコードです。 テンションコードについてはコチラをご覧下さい。 セブンスナインスコードの使い方についてはコチラをご覧下さい。
Ⅳ7はドリアンモードからのモーダルインターチェンジコード(借用和音)です。 モーダルインターチェンジコードについてはコチラ↓ |
♭Ⅲ7(13) | テンションコードです。 テンションコードについてはコチラをご覧下さい。
♭Ⅲ7はⅥ7の裏コードです。 裏コードについてはコチラ↓
Ⅵ7はⅡm7に対するセカンダリードミナントコードです。 セカンダリードミナントコードについてはコチラ↓ |
Cメロ
キーはGメジャーです。
|GM7|Em7(9)|Am7(9)|F#m7 B7
→|ⅠM7|Ⅵm7(9)|Ⅱm7(9)|Ⅶm7 Ⅲ7
(バランスの~)
|B♭7(#11)|B♭7(#11)
→|♭Ⅲ7(#11)|♭Ⅲ7(#11)
|AmM7 Am7onG|F#m7 B7
→|ⅡmM7 Ⅱm7onⅠ|Ⅶm7 Ⅲ7
(明日の一面を~)
コード | 説明 |
---|---|
Ⅵm7(9) | テンションコードの1つであるマイナーセブンスナインスコードです。 テンションコードについてはコチラをご覧下さい。 マイナーセブンスナインスコードの使い方についてはコチラをご覧下さい。 |
Ⅱm7(9) | テンションコードの1つであるマイナーナインスコードです。 テンションコードについてはコチラをご覧下さい。 マイナーナインスコードの使い方についてはコチラをご覧下さい。 |
Ⅶm7 | リディアンモードからのモーダルインターチェンジコード(借用和音)です。 モーダルインターチェンジコードについてはコチラ↓ |
Ⅲ7 | Ⅵm7に対するセカンダリードミナントコードです。 セカンダリードミナントコードについてはコチラ↓
ただし実際はⅥm7に進行せず、♭Ⅲ7(#11) に偽終止しています。 |
♭Ⅲ7(#11) | テンションコードです。 テンションコードについてはコチラをご覧下さい。
♭Ⅲ7はⅥ7の裏コードです。 裏コードについてはコチラ↓
Ⅵ7はⅡm7に対するセカンダリードミナントコードです。 セカンダリードミナントコードについてはコチラ↓ |
ⅡmM7 | クリシェをするための経過和音です。 ⅡmM7→Ⅱm7onⅠの進行においてⅡmM7の1度の音が半音ずつ下がっていきます。 度の意味についてはコチラ↓ クリシェについてはコチラ↓ |
Ⅱm7onⅠ | Ⅱm7の7度の音を最低音にしたオンコードです。 度の意味についてはコチラ↓ オンコードについてはコチラ↓ |
以上、ご覧いただきありがとうございました。
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