このシリーズでは名曲の中で音楽理論がどのように使われているかを学ぶことができます。
今回は、Antonio Carlos Jobimの名曲「イパネマの娘」のコード分析を行います。
「イパネマの娘」では、以下の音楽理論の使い方を学ぶことができます。
- セカンダリードミナントコード
- 偽終止
- 裏コード
- モーダルインターチェンジコード
- 転調
それでは分析していきましょう。
ここではダイアトニックコードを理解していることが前提です。ダイアトニックコードを知らない方は以下で勉強しましょう。
ダイアトニックコードとは?コード進行の作り方
コード進行
【パートA】
|FM7|FM7|G7|G7
|Gm7|F#7|FM7|F#7
【パートB】
|FM7|FM7|G7|G7
|Gm7|F#7|FM7|FM7
【パートC】
|F#M7|F#M7|B7|B7
|F#m7|F#m7|D7|D7
|Gm7|Gm7|E♭7|E♭7
|Am7|D7|Gm7|C7
【パートD】
|FM7|FM7|G7|G7
|Gm7|F#7|FM7|F#7
コード進行参考:ジャズ資料館
コード進行分析
パートA
キーはFメジャーです。
|FM7|FM7|G7|G7
→|Ⅰ|Ⅰ|Ⅱ7|Ⅱ7
|Gm7|F#7|FM7|F#7
→|Ⅱm7|♭Ⅱ7|ⅠM7|♭Ⅱ7
コード | 説明 |
---|---|
Ⅱ7 | Ⅴ7に対するセカンダリードミナントコードです。 セカンダリードミナントコードについてはコチラ↓ Ⅴ7に進行しない場合は偽終止しています。 偽終止とはドミナントからトニックに行かないコード進行のことです。 |
♭Ⅱ7 | Ⅴ7の裏コードです。 裏コードについてはコチラ↓ |
パートB
キーはFメジャーです。
|FM7|FM7|G7|G7
→|Ⅰ|Ⅰ|Ⅱ7|Ⅱ7
|Gm7|F#7|FM7|FM7
→|Ⅱm7|♭Ⅱ7|ⅠM7|ⅠM7
コード | 説明 |
---|---|
Ⅱ7 | Ⅴ7に対するセカンダリードミナントコードです。 セカンダリードミナントコードについてはコチラ↓
偽終止とはドミナントからトニックに行かないコード進行のことです。 |
♭Ⅱ7 | Ⅴ7の裏コードです。 裏コードについてはコチラ↓ |
パートC
皆様のご意見をもとに分析を修正しました(2023/2/6)。
キーはFメジャーです。
|F#M7|F#M7
→|♭ⅡM7|♭ⅡM7
キーはEメジャーです。
|B7|B7
→|Ⅴ7|Ⅴ7
|F#m7|F#m7|D7|D7
→|Ⅱm7|Ⅱm7|♭Ⅶ7|♭Ⅶ7
キーはD♭メジャーです。
|F#M7|F#M7|B7|B7
→|ⅣM7|〃|♭Ⅶ7|〃
|F#m7|F#m7|D7|D7
→|Ⅳm7|〃|♭Ⅱ7|〃
キーはFメジャーです。
|Gm7|Gm7|E♭7|E♭7
→|Ⅱm7|Ⅱm7|♭Ⅶ7|♭Ⅶ7
|Am7|D7|Gm7|C7
→|Ⅲm7|Ⅵ7|Ⅱm7|Ⅴ7
コード | 説明 |
---|---|
| |
♭Ⅶ7 | エオリアンモードからのモーダルインターチェンジコード(借用和音)です。 モーダルインターチェンジコードについてはコチラ↓ |
Ⅳm7 |
エオリアンモードからのモーダルインターチェンジコード(借用和音)です。 モーダルインターチェンジコードについてはコチラ↓ |
♭Ⅱ7 | Ⅴ7の裏コードです。 裏コードについてはコチラ↓ |
Ⅵ7 | Ⅱm7に対するセカンダリードミナントコードです。 セカンダリードミナントコードについてはコチラ↓ |
途中にFメジャーからEメジャー(半音下)に直接転調をしています。
そのあとEメジャーからFメジャー(半音上)にドミナントコードを使った転調をしています。
FメジャーからD♭メジャー(長3度下)に直接転調をしています。
そのあとD♭メジャーからFメジャー(長3度上)にドミナントコードを使った転調をしています。
転調については以下をご覧ください。
「転調の方法」と「転調パターン一覧」
パートD
キーはFメジャーです。
|FM7|FM7|G7|G7
→|Ⅰ|Ⅰ|Ⅱ7|Ⅱ7
|Gm7|F#7|FM7|F#7
→|Ⅱm7|♭Ⅱ7|ⅠM7|♭Ⅱ7
コード | 説明 |
---|---|
Ⅱ7 | Ⅴ7に対するセカンダリードミナントコードです。 セカンダリードミナントコードについてはコチラ↓ Ⅴ7に進行しない場合は偽終止しています。 偽終止とはドミナントからトニックに行かないコード進行のことです。 |
♭Ⅱ7 | Ⅴ7の裏コードです。 裏コードについてはコチラ↓ |
以上、ご覧いただきありがとうございました。
コメント
パートC
キーはFメジャーです。
|F#M7|F#M7 →|♭ⅡM7|♭ⅡM7
キーはEメジャーです。
|B7|B7 →|Ⅴ7|Ⅴ7
この部分は以下の解釈が適当かと存じます。
キーはDbで、
GbM7がサブドミナント = IVM7
B7(Cb7)がサブドミ・マイナー = bVII7(モーダル・インターチェンジ)
このように捉えればサビの三段がサブドミ~サブドミ・マイナーの進行で揃い美しく感じます。お節介しました、悪しからず。
Chris様
まったくお節介ではございません。
コメント大変ありがたいです。
ぜひ参考にさせていただきます。
また何かあればよろしくお願いします!
こんにちは。イパネマの娘のコード進行の解釈を調べていてこちらの記事にたどり着きました。
私もChris様同様に、短6度上(長3度下)への転調と解釈し、転調後のコードをIV△7と把握する方法がしっくり来るかなと思いました。
Chris様、ブログ主のカラメル様、貴重な分析結果をありがとうございます。
ご指摘ありがとうございます。大変参考になります。
2度もご指摘をいただきましたので該当箇所の修正を行いました。
今後ともよろしくお願いいたします。